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     阿村がたきり節    
            
             松島うた製作保存会



文政4年(1821)対岸の八代郡文政村に、総面積700町歩に及ぶ新地の造成工事が始められました。阿村潟きり節に「~長い土手ばな おざやの土地は流れ(ながれ)千間(せんげん)十五間」と歌われる“おざや(現・鏡町)新地”干拓です。この工事に、阿村から三百人もの人々が働きに出かけました。

阿村潟きり節は「~阿村お菊を 花壇に据えて花と見比べて見とうござる~」と、歌われるヒロインのお菊と工事監督利兵衛との悲恋をモチーフにした労働歌です。別名“新地節”とも言います。踊りは、当時の労働作業風景を伝えるもので、永く歌い・踊り継がれています。


<がたきり節の伝え>
天草上島(あまくさかみしま)の松島町(まつしままち)には、”がたきり節”という民謡にまつわる悲しい話が残っている。
その昔、阿村(あむら)に、お菊という美しい娘が住んでおったそうな。
あるときのこと、お菊は対岸の八代(やつしろ)の大鞘(おおざや)ちゅうところへ、干拓工事(かんたくこうじ)の人夫(にんぷ)として働くことになった。
 ところが、工事が始まって何度目かの秋が過ぎたころのことじゃ。
お菊は工事人夫の頭(かしら)と恋仲になってしもうた。皮肉なことにその男は妻子(さいし)持ち。二人は他人の目をはばかりながら苦しい恋を続けたそうな。
 さて、工事も進み、いよいよ潮止め(しおどめ)(海の水をせき止めること)のとき、どうしたことか、潮洩れ(しおもれ)が起こったんじゃ。さあ大変、潮洩れを止めなければ、潮が満ちて、せっかく今まで築いた堤防がくずれてしまう。
 するとそのとき、急にお菊が走り出て、
  「この体を捧(ささ)げます。潮ば止めて下さい」と大声で叫びながら海水の中に飛び込んでしもうたそうな。ところがどうじゃ。お菊の気持ちが天に通じたのか、今まで流れ込んでいた海水が、ぴたりと止んだではないか。
 おかげで、工事は無事完成した。お菊のこの話しは、後々までも村人の間に語り伝えられたそうじゃが、いつ頃からか、それが歌となって愛唱されるようになった。
 これが今も残る”がたきり節”なんじゃと。

 ♪♪阿村がたきり節


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